MEMBER
さくら製作所で活躍しているメンバーが入社を決めた理由や、仕事に感じているやりがいなどを紹介します

「ワインセラーメーカー」と聞くと、ニッチな世界を想像するかもしれません。しかし、さくら製作所の事業は今、日本酒セラーによるアジア展開、大手企業との技術協業、熱中症対策製品の開発と、ワインセラーの枠を超えて広がりを見せています。その挑戦の現在地と、これからの展望を、代表の穂積と製品開発部長の奥村に語り合ってもらいました。
── さくら製作所の最初の製品は、業界初の2温度式ワインセラーだったそうですね。
穂積:そうです。前職の商社で営業をしていた時に、レストランのオーナーやソムリエから「赤と白を分けて、美味しい温度でお客さんに提供できるセラーが欲しい」とずっと言われていたんです。企画書をつくってお客様に見せると「これが欲しかった」と言ってもらえる。
なのに、当時の会社では製品化の許可が下りなかった。だったら自分でつくろうと思ったのが、起業の一番の動機です。海外のメーカーに企画書を持ち込んで、開発を進めました。最初の半年ぐらいは2時間睡眠みたいな日が続きましたけど、とにかく早く形にしてお客様に届けたかった。
奥村:私は2温度式ワインセラー発売後に、穂積に誘われて会社に入りました。このワインセラーは発売後わずか3ヵ月で月商3000万円を達成して、想像以上の反響で驚いたのを覚えています。前職では穂積と同じ商社のワインセラー事業部で一緒に働いていました。性格はまったくの真逆なんです。穂積は新しい取引先をどんどん開拓するタイプ、私は在庫管理やお金の流れをマネージして、既存の商売を固めていくタイプ。ただ、穂積と一緒に動く中で、面白い発想がそのまま売上になっていくのを見ていたので、「この人は先が見えているな」という実感があってさくら製作所に入ることを決めました。

── 次に生まれたのが、業界初の日本酒セラーですね。
穂積:そうです。ワインと日本酒を一緒に保管したいという声が出てきて、開発が始まりました。同時に、日本酒には海外展開の可能性も感じていました。ワインセラーというカテゴリーで海外に売り出すとしても、すでに競合として存在するフランスやドイツの老舗に競り負けるのは見えていました。一方、日本酒セラーはまだ世に出回っていない製品です。しかも、日本のメーカーがつくることで、ブランディングの文脈でも独自性が出しやすかった。日本酒ありきの海外戦略ですよね。
奥村:日本酒セラーは、日本酒を最も美味しい状態で保管するために0℃以下の氷温管理を実現しています。この開発にはかなり苦労しました。一番苦労したのが0℃の壁です。冷蔵庫で言うと冷蔵室でも冷凍室でもない、一番中途半端な温度帯なんです。通常のワインセラーなら霜は勝手に溶けますが、零度以下だと霜が溶けない。冷却部分は特にマイナス30度ぐらいになるので一気に霜が付く。それをどう解消しつつ0℃を維持して、しかも温度変化を抑えるかの調整に時間を要しました。
穂積:今はマイナス5度保管が可能な製品も開発していますが、温度が下がるほど調整が難しくなっています。マイナス5度にすること自体が目的だったら、恐らく誰でもできます。ただ、どれだけ温度性能が優れていても、音がうるさかったり電気代が高かったりすれば、日常的に使い続けてもらえない。それでは意味がないんです。
奥村:だからこそ、マイナス5度の実現だけでなく、スリムでスタイリッシュで、音も静かで電気代も安いという、すべての要素を高い水準で両立させたい。物理の法則と常に向き合いながら、どこでバランスを取るかが一番難しく、一番面白いところです。
穂積:このようにお客様の期待に応え続けられたからこそ、8年連続ワインセラー国内売上No.1(※)も実現できているのだと感じます。
※2026年時点

── 海外展開も進めていると伺いました。
穂積:現在はソウル、香港、台湾など東アジアの主要都市を中心に、日本酒セラーの海外進出を進めています。特に台湾が好調です。台湾は人口あたりの訪日比率が非常に高くて、日本に来たら日本酒を飲む方も多い。お土産で買ったり日本から取り寄せたりする方々も増えており、日本酒保存のニーズが高まっています。しかし、本格的な日本酒専用のセラーは台湾には存在しません。そこにちょうど日本酒セラーとして参入できたのが大きかったですね。
また、台湾は高温多湿なので、冷えていること自体への価値が日本以上に高いのも、売上が好調な理由かもしれません。幸運なことに、派生的にワイン好きの方にもリーチできています。
奥村:技術的な面では苦労することも多かったです。台湾は日本より高温多湿なので、扉の結露対策をもっと踏み込んで考える必要がありました。
目指しているのは、基本設計を維持したまま、多様な国や環境で通用する製品開発なんです。今後海外展開が広がれば、各国の事情に合わせたカスタマイズや考慮すべき要素は複雑化して、最適なバランスを取るのは一層難しくなります。でも、これを成長の機会と捉えて、世界中で愛される良い製品を作るための新たなチャレンジとして注力していきます。
穂積:ここまで順調に進んでいるのは、日本で7〜8年かけて築いてきた実績、蔵元からの支持、お客様からのSNSでの評価などがあってこそだと思います。現地の代理店がそれを見て「この製品は信頼できる」と感じてくれて、初めてスタートラインに立てる。今後は、東アジアを中心としつつも、シンガポールなどへも拠点を広げていく予定です。

── 自社開発だけでなく、シャープなど大手企業との協業も積極的に進められていますよね。
穂積:シャープとの協業は、ワインを1本から適温で管理できる「ワインスーツ」の開発から始まりました。ぜひシャープの技術をセラーに応用したいと考え、こちらから持ちかけて実現した商品です。そこから、IoTのアプリケーション開発(※)などさまざまなプロジェクトにつながっています。お互いに協業していく中で「こういうこともできませんか」とアイデアが広がっていくんです。
奥村:そうした対話の中から、現在はシャープのまた別の技術をワインセラーへ実装すべく、共同で検証を行っているところです。シャープにとっても初の試みなので、トライアンドエラーを繰り返している段階ですが、今後もさらなる進化を目指します。
穂積:全部をゼロイチで考える必要はないと思っています。世の中にはすでに素晴らしい技術がたくさんある。例えばシャープの冷蔵庫には「どっちもドア」という右にも左にも開く技術があります。これをワインセラーに応用できるとより便利になる。ただワインセラーのドアは重いので技術をそのままは使えない。じゃあ重さに耐えうる仕組みをどうつくるか。製品づくりには、新規開発ではなく既存技術をどう取り入れるかの視点もとても重要です。
※IoTとは、インターネットに接続されたデバイスを利用してワインの保管状況を監視・管理する技術を指す。

── 温度管理の技術はさくら製作所の強みだと思いますが、今後、この技術をどのように広げていこうと考えていますか?
穂積:私たちが強みとしているマイナス5度保管の技術から派生して、最近面白い技術を生み出しました。マイナス5度で液体を冷やすと「アイススラリー」という飲める氷ができるのです。これを応用するだけで、ワインや日本酒といった嗜好品の世界とは全く違うマーケットが広がります。
奥村:建設現場、物流施設、警備会社、スポーツ施設、介護施設。そういった場所に、消火器のように常備できるアイススラリー庫を置いておくだけで、熱中症対策になるんです。先日、SNSでこの構想に関するコンテンツを発信したところ、建設ゼネコンや大手物流会社など10社以上から問い合わせがありました。
穂積:このアイススラリーに関しては特許も持っていますし、マイナス5度の制御技術に加えて断熱や排水の処理まで含めた総合的なノウハウがあるので、他社がすぐに真似できるものではありません。これがうまく製品化できると、狙える市場が一気に広がると感じています。

── そうなると、もう「ワインセラーの会社」という枠ではないですよね。
穂積:そうですね。ワインセラーにはこだわっていません。ワインでも日本酒でもアイススラリーでも、共通しているのは「造り手が届けたい品質を、温度の力で守る」ということなんです。ワインの生産者は、自分が丹精込めて造ったワインを最高の状態で飲んでほしいと思っている。日本酒の蔵元も同じです。私たちのセラーは、その想いを最後までつなぐための道具なんですよね。
奥村:だから軸は「温度管理」であると同時に、「生産者ファースト」でもある。技術をどこまで追求するかの判断基準も、常にそこにあります。
穂積:ハイスペックでありながら価格を上げすぎないのも、その考え方からです。転売目的で買われる高級品をつくりたいわけではなく、レストランや酒蔵、一般的なライトユーザーが日常的に使える製品であることが大事です。生産者が無理なく手に取れて、その先のお客様に「美味しい」を届けられる。そこがぶれなければ、ワインセラーでもアイススラリーでも、やることの本質は変わりません。
──ワインセラーや日本酒セラー、アイススラリーなどの新技術、海外展開など事業が広がりを見せる中で、この先を一緒につくっていく仲間にはどんなことを期待しますか。
穂積:これだけの事業が同時に動いているので、どの職種で入っていただいても、ワインセラーだけに閉じた仕事にはならないと思います。
マーケティングで言うと、製品が多様化する中で、国内のワイン愛好家だけでなく、ライトユーザーや海外の日本酒愛好家、さらにはアイススラリーであれば建設現場で作業する方まで、ターゲットがどんどん広がっています。製品の魅力の届け方も響く言葉もまるで違う中で、各ターゲットに刺さる価値は何かを考え抜ける人が活躍できると思います。
海外営業であれば、日本とは販路も商習慣も食文化も何もかもが違う市場で、「日本酒セラー」という概念自体を伝えるところから始まることもある。現地の文化やビジネスの流儀を楽しんで理解し、入り込める人を求めています。
奥村:製品開発で言うと、今の仕事は温度制御だけではなくなっています。外部技術の組み込み、IoTとの連携、海外展開による各国の食文化や気候に合わせた設計。「冷蔵庫に近い家電」という範疇にはもう収まりきらないほど、扱う領域が広がっています。十数年前の自分が、シャープと一緒にIoTのプログラムを開発したり、海外工場に技術指示を出したりしている今の姿を見たら、驚くと思います。この先も技術の領域は広がっていくので、その変化を面白がれる人に来てほしいですね。
穂積:小さな会社ですが、一つひとつの業務のスケールは決して小さくありません。事業の広がりに面白さを感じてくれる方、そしてその広がりを自分の手でつくっていきたいと思える方にとっては、成長できる環境だと思います。
